Q17.予防の考え方
岡山大学の岡崎先生のお話より。
以前、NHKのプロジェクトXでも紹介されましたが、平成9年1月、ロシアのタンカー(ナホトカ号)が沈没して、福井県の海岸に多量の重油が流れ着きました。
冬の荒波の中、大勢のボランティアが、重油を、ひしゃくで、すくったり、岩に付いた重油を雑巾や竹ベラで拭き取る作業をテレビで見ました。
とても気の遠くなるような場面でした。
実は、このシーン、歯科の診療室でも同じようなことを目にしています。
前回処置した銀歯が、ピカピカ光っているはずなのに、次回来院した時すでに、多量の歯垢で被われ、くすんでいます。
「せっかく、きれいに治療したのに」
銀歯に付いた歯垢。
これは岩に付いた重油と同じだと思いませんか?
たとえて言えば、乳歯齲蝕(むし歯)の洪水と言われた時代は、治しても治しても、穴を掘っていたように、次々に、むし歯ができました。
岩に付いた重油を取り去ることに精力を注ぐより、重油を流し続けるナホトカ号に目を向けた方が良いのではないでしょうか?
ということは、歯垢を取り去ることを考えるより、歯垢の付く原因について考えた方が近道ではないでしょうか?
たとえ歯科医院で治療が終わったとしても、こういう状態が続けば、まもなく、治した歯も他の歯も齲蝕(むし歯)になる可能性は高いでしょう。
患者さんは穴を見て、むし歯になったと思います。
穴を見て、むし歯だということは、医療従事者でなくても、患者さんでもできることです。
患者さんにとって、現在のむし歯のある・なしが重要な問題ですが、医療従事者は、今後の予測を伝える義務があります。
どうすれば、患者さんに、わかっていただけるか、悩むところです。
特に、乳歯から永久歯に萌え代わる、5歳から8歳くらいの子供さん(と保護者)に対して、この歯は、検診では大丈夫と言われたようですが、私の目には穴が開いているように見えるのです。
「えー」と思われるでしょう。
その言わんとするところは、歯は、2段階で硬くなります。
第1段階は骨の中で。
第2段階は、はえた後、唾液中のカルシウムがついて硬くなるのです。
だから、はえたての歯は、むし歯になりやすいのです。
「はえたての歯は、タケノコと一緒です。はえたてのタケノコのは食べられますが、竹になると硬くて食べられません。」
「はえたての歯は流したてのコンクリートといっしょです。時間がたてば硬くなります。フッ化物はちょうど、コンクリートの硬化促進剤にあたります。」
患者さんは、削って埋めさえすれば、歯の治療は終わったと考えています。
しかし、充填物と歯の境目から2次齲蝕が発生しやすいのです。
どうすれば、患者さんに、わかっていただけるか、悩むところです。
金属は熱いモノにより熱膨張し、冷たいモノに触れると収縮します。
熱いお茶や、冷たいアイスクリームを食べるたびに、充填物は膨張や収縮を繰り返しているのです。
それで境目が齲蝕になりやすいのです。
残念ながら、これまでの治療は、削っては埋めるといった、その場限りの治療だったかもしれません。
それを繰り返すより、予防の重要性を伝えていきたいと思います。
以下は、岡山大学の岡崎先生のHPです。
http://leo.or.jp/Dr.okazaki/index.html